このインフレーションが何によって引き起こされたのかはまだ完全には分かっていませんが、一つの説は、宇宙全体を包み込むような特殊な「量子場」というものが関係しているというものです。
量子場とは、宇宙の最も基本的な成分として宇宙全体に広がっており、物質やエネルギーは、この場を通じて存在できるようになると考えられています。
しかしインフレーション時にはそんな宇宙を支える場が何らかの理由で不安定になり、その結果として宇宙が急激に膨張したと考えられています。
たとえるなら、宇宙と言う水槽を満たしていた水が突然沸騰して蒸気に変わるような状況を想像すると良いでしょう。
インフレーションの終わりには、この量子場が崩壊して加熱され、何もない空間から突然、大量の粒子と放射線が発生し、後に私たちの体や銀河の星々を作る材料となりました。
砂糖が水に溶けている状態から、水が蒸発して砂糖が再び結晶化するようなものと考えることができます。
これが「ビッグバン」として知られる現象です。
このビッグバンによって発生した粒子は、宇宙が誕生してから約12分後に初めて原子を形成し、その後数億年をかけて星や銀河が形成され始めました。
この空間から粒子が出現するという性質は現在の宇宙にも引き継がれており、粒子加速器などで大きなエネルギーを発生させると、空間からさまざまな粒子が出現することがわかっています。
そのため膨張する宇宙に住む私たちは、ある意味で、ビッグバンの最中あるいは裾野に存在していると言えるでしょう。
しかしここで語られるのは主に素粒子や原子など「通常の物質」です。
一方、宇宙には通常の物質よりも遥かに膨大な「暗黒物質」が存在しています。
暗黒物質は2度目のビッグバンで作られた
そもそも暗黒物質とは何なのか?

暗黒物質は直接見ることができない物質です。