しかし、いざ関税引上げや消費増税が発効した後、なおも駆け込み購入が続くというよりも、むしろ反動減が来ると考えるのが自然ではないか。
輸入品の在庫を積んだ企業は在庫消化期間に入る。「インフレ期待」は関税引上げが相当の確度をもって予想されており、かつ実際にまだ引き上げられていない時間帯のみ、購買や発注行動に影響するということだ。輸入物価の上昇が小売価格まで波及さえすれば、それ以上の継続的なインフレ圧力を懸念する必要はない。
関税対応の利下げ
第一次トランプ政権時の金融政策を振り返るWSJによると、関税は財やサービスの供給能力を低下させ、価格を押し上げる一方で経済成長を鈍化させる可能性がある。輸入品への追加関税はサプライチェーンを混乱させる恐れがあり、更に関税の導入が一貫性を欠く形で進められれば、企業はコスト構造が不透明になるため新規投資を控える可能性がある。
第一次トランプ政権下の2019年ではFedは景気を下支えするために先手を打って利下げを行った。関税への対応は利下げであるのが自然であり、逆ではない。
金融政策に落とし込むと、関税発動前の駆け込み消費や在庫積上げを手助けするような利下げは確かに必要ない。しかし一旦それが終わってただの消費増税期間に移行した後、もし本ブログが考察した増税効果観測が現実化するなら、駆け込みの反動が始まったタイミングで素早い利下げが必要になるのではないか。
そのタイミングも、関税発動が出揃い、駆け込み輸入が止まってから幾分か経った時点であろうと予想できる。仮に同時に進む政府支出削減の動きが労働市場に与えた影響が見え始めた場合、尚更Fedは関税の影響を考えていないで即座に利下げしなければならない。
遅れたらキャッチアップのための50bp利下げ以上の大幅利下げに追い込まれるだろう。その場合、会合間の2ヶ月のインターバルさえも長すぎるように見えるので緊急利下げが必要になるかもしれない。その時になって「CPIやPCEの数字がまだ前年比で物価目標対比で高い」などと言って様子見期間が長くなると、それはポリシーフェイルとして罰せられることになる。