これは第二次トランプ政権の関税政策をインフレーショナリーであると見るかどうかの違いであるが、要するに政権の経済政策への信認の差であり、もはや経済に関するアンケートではなく政治投票である。

この政治色が強いインフレ期待は果たして人々の購買行動を変え、インフレを引締めづらいものにするだろうか。より具体的に、将来の財の価格が関税のせいで上がると思った民主党支持者は財の消費行動を前倒しで増やし、それが持続的に物価を持ち上げるだろうか?また共和党支持者はデフレ期待で財の消費行動を後ろ倒しするのだろうか?

インフレ期待が高まると共にミシガン大消費者調査における民主党支持者の消費センチメントも大きく落ち込んだ。それでもインフレ期待に基づいて彼らは財の消費を増やし続けるのか。

家計自身の収入期待も悪化しており、これは概ね堅調だった2022年のインフレ時とは異なる挙動である。関税が発動される前はともかく、将来の収入期待が下がる中で関税が発動された後もインフレ期待に基づいて消費を増加させるとすれば、かなり気合いが入った家計と言わざるを得ない。

カンファレンスボード消費者信頼感までが同じようにインフレ期待の高まりと共に落ち込むとすっかり成長懸念が高まった。インフレ期待と消費者信頼感の逆行現象は、総予算が一定な中で物価が上がると買えるものが減るので当たり前であるが、この組合せは往々にしてスタグフレーショナリーにも見えるところが非常に不快である。

案の定、スタグフレーションの可能性が取り沙汰されるようになった。現実の先進国でスタグフレーションになることはほとんどない。不況なら消費が減って一般物価が下がるのが当たり前だからである。

全米で300~500人程度しか回答していないミシガン何とかよりも調査範囲が広いことが知られるNY Fedのインフレ期待の動き幅はもっと緩いが、上向きは上向きである。