しかし、嬉しいのはあくまでも税金を徴収する米国政府だけである。一般的に政府の歳入を増やし民間経済にネガティブな影響を与える税の中で、関税は何も特殊な税ではないのだ。

消費税引上げは消費者の可処分所得を蝕むためデフレーショナリー、つまり一般物価にとってネガティブであることが分かっている。従ってたとえ関税の一部が消費者に転嫁されたとしても、それは一般物価を上昇させるものではない。消費者の可処分所得が一定であるなら、一部の品目の価格が突然上昇したとしても、その品目への需要が減るか、予算制限から他の品目の購買を減らすからだ。減らなければ貯蓄率が悪化する。

関税が招く物価上昇は一過性のものであり、財の末端価格が関税分だけ上昇した後、翌年も元には戻らないにしろ、追加関税が次々と打ち出されない限り、更に上昇するわけではない。従って関税はデフレーショナリーであるとの議論が可能になる。

消費増税で財の値段が上昇するのをインフレーショナリーと呼称する人間はいないのに、輸入品の一部消費増税に等しい関税引上げで財の値段が上昇するのはインフレーショナリーと言われるのはなぜだろうか?

消費増税前も駆け込み買いは発生する。しかしその駆け込みを見て中央銀行が金融引締めをしなければならないと主張する人はいないのである。

小さな政府を目指すトランプ政権は関税の歳入を将来の減税の財源に当てることになる。あえて斜め上から俯瞰すると、歯止めがかからない米国の「放漫財政が招いたインフレ」への対策として、昨年の大統領選では、民主党案の大きな政府による富裕層や企業からの増税か、共和党案の「小さな政府による一般消費者と海外からの増税」が争われたわけである。そこで米国民の集合知は後者を選択した。

現にバイデン政権の放漫財政が招いたインフレを金融政策で引締めるには限界があることが分かっており、政府支出削減と(何税でもいいから)増税という組合せはインフレ退治策として筋がよい。なお、低所得層ほど消費に占める財の割合が大きく、高所得層ほどサービスの割合が増えるため、関税は通常の消費税より更に逆進性が強いことに留意が必要である。

今後の関税スケジュールとそのインパクト