この政治改革4法の成立の際の政治資金規正法改正により、抜け穴が多くて実効性がないとされていた「保有金制度」が廃止されて政治家個人に対する政治資金の寄附が禁止され、政治家個人の政治資金収支報告書の作成提出義務もなくなった。政治資金規正法21条の2は、それに伴って規定されたものである。
つまり、1994年改正以前であれば、今回のような政治家個人に対する寄附は、保有金として政治資金収支報告書に記載することで合法とされていたが、同改正で、一律に違法とされるとともに、政治家個人の収支報告書への記載義務がなくなったのである。
1994年改正で、なぜ、政治家個人宛の寄附が禁止されたのか。その目的は、政治家個人の政治資金の収支は、資金管理団体に一元化し、政治家の私的収支と政治資金とを切り離すことによって、政治資金を透明化することにあった。
しかし、そのような意図に反し、政治家個人が代表を務める政党支部が企業団体献金の受け皿として認められ、また、国会議員関係団体への寄附の税制優遇が認められたこともあって、国会議員個人をめぐる政治資金の処理は一層複雑化し、どこに帰属するのか不明な政治資金を処罰することは困難となった。
そのために、政治家個人が現金等を直接「裏金」として受け取った場合、どの政治団体、政党支部に帰属するものであるかが特定できないので、政治資金収支報告書の虚偽記入罪等による処罰が困難だという、私がかねてから指摘してきた「政治資金の大穴」問題が生じた。それが典型的に表れたのが、政治資金パーティー裏金問題なのである。
1994年改正で導入された「21条の2」の政治家個人宛寄附禁止規定は、政治資金収支報告書の記載義務に関する違反のように「会計責任者」が義務主体になるのではなく、「政治家個人宛の寄附」と認識して供与した者、受領した者は、「何人も」処罰の対象となる。そのため、政治資金パーティーの還流金も、政治家本人だけでなく、秘書が「政治家個人宛」の寄附と認識して受領すれば、罰則が適用される。