「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。」
とされており、総理大臣が自らの訴追に同意することは考えられないので、在任している限り、総理大臣が訴追を受けることは事実上あり得ない。逆に言えば、仮に、その事件で訴追を受けるべきということであれば、潔く辞任すべきというのが、「法と正義」に則った対応ということになる。
商品券問題発覚以降、石破首相は、「政治活動ではない」の一点張りで、刑事責任を否定している。しかし、権力の座にある者として、自らの疑惑に対して、その当事者本人が責任を否定するだけでは、適切な対応とは言えない。
特に、総理大臣の刑事責任の問題は、「在任中の訴追の可能性」が事実上ないのであるから、「本来、訴追されるべき事案か否か」については、客観的、第三者的視点からの検討が行われ、総理大臣として、それを踏まえて判断する姿勢で臨むべきである。
この点については、兵庫県の斎藤元彦知事の対応を「他山の石」とすべきであろう。
自分自身のパワハラ問題、パレード協賛金問題などの告発文書に対して、告発者捜しの調査を行って、知事会見で「嘘八百」などと言って告発者を非難し、懲戒処分を行い、それにより、告発者が自ら命を絶ち、それをめぐって県議会での対立が生じた。
兵庫県の斎藤元彦知事の問題も、自分自身についての疑惑に対して客観的、第三者的な判断を仰ごうとせず、自ら「問題ない」と決めつけたことに、そもそもの問題があった。そのような斎藤知事の姿勢が、兵庫県民のみならず多くの国民からの批判につながり、斎藤氏の岩盤支持者との間の対立の激化、立花孝志氏の介入もあって、今なお県政の混乱が続いている。
石破首相は、総理大臣としての責任において、今回の商品券問題について政治資金規正法違反の成否について、国民の納得が得られるような客観的な検討を行うべきである。
そのために、専門家、実務経験者等による第三者機関を設置し、商品券問題の背景にある政治資金規正法をめぐる構造的な問題、政治家個人をめぐる政治資金の不透明性、課税の不徹底を招いてきた「政治活動」の範囲の曖昧さなどについても検討した上、それを踏まえて、自身の商品券問題についての刑事責任の有無・程度について判断するのが、総理大臣として行うべき対応ではなかろうか。