そして、この規定で処罰された「違法寄附」は全額没収となり、国庫に帰属する。この規定を積極的に適用していれば、「政治資金規正法の大穴」も相当程度塞ぐことができたはずだ。

しかし、検察当局は、これまで、政治家個人宛寄附禁止規定の適用は検討すらほとんど行ってこなかった。「21条の2」の罰則が「1年以下の禁錮・50万円以下の罰金」であり、収支報告書虚偽記入罪の「5年以下の禁錮・100万円以下の罰金」と比較して著しく軽いということが、適用を阻害する要因になっているように思える。

各年の政治資金収支報告書が翌年11月に公表され、実際に、発生した政治資金の収支が公開されるまでの期間が平均で1年半程度、年初のものであれば2年近くかかる現行制度の下では、今回の「政治資金パーティー裏金問題」のように、公表された政治資金収支報告書の記載に基づいて問題が指摘され、それが刑事事件に発展して、最終的に裏金の存在が明らかになり、「政治家個人宛寄附の禁止」違反が発覚した場合、その時点でかなりの部分が公訴時効が完成している。そのため、裏金として立件できる金額が限られることになる。

しかし、実際に刑事立件できる金額だけではなく、それに伴って、違法な寄附が没収され国庫に帰属すること、処罰されなくても、所得税の課税が可能であることなども考慮すべきだ。「政治資金パーティー裏金問題」でも、この規定は積極的に活用すべきだった。それを検討すらしなかったのは、検察当局の怠慢と言わざるを得ない。

憲法75条の規定により「総理大臣は在職中、訴追されない」

今回、この商品券問題に関して、「総理大臣の犯罪」として、政治家個人宛の寄附を禁止する「21条の2」違反が問題になり、既に、市民団体による石破首相を被告発人とする告発が行われている。このような状況において、石破首相は、どのような対応を行っていくべきか。

これに関して、見過ごされているのが、憲法75条との関係だ。同条で、