直近の「政治資金パーティー裏金問題」での検察の捜査処分からも明らかなように、政治資金規正法21条の2の政治家個人宛寄附禁止規定は全く機能していない。そのため、実際には、政治家間の不透明な金銭等のやり取りが事実上野放しになってきたのである。そういう現実を、今回議論する上で、念頭に置く必要がある。
要するに、石破首相の「商品券問題」は、「政治活動」に該当するかどうか、だけが問題なのではなく、そのような政治活動に当たるかどうかが曖昧な資金のやり取りを含め、政治家個人の間の不透明な金銭等のやり取りに対して、政治資金規正法が全く機能していないことに重大な問題があるのである。
そのためには、「21条の2」の規定が設置された経緯も含め、政治資金規正法の歴史的経緯に遡る必要がある(【前掲拙著】第6章)。
「政治家個人宛寄附」をめぐる政治資金規正法改正の経緯
1970年代、ロッキード事件、ダグラス・グラマン事件等を受けて、政治倫理の確立が当時の大平内閣の重要な政治課題になり、民間有識者及び関係閣僚からなる首相諮問機関「航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会」が設置された。同協議会は、「政治家個人の政治資金の明朗化」を提言、1980年に政治資金規正法改正法が成立、政治家個人の政治資金の公開のための「指定団体制度」「保有金制度」等が導入された。
しかし、1980年代末、リクルート事件等で「政治とカネ」の問題への批判が高まり、自民党は政権を失い、1994年、細川内閣の連立与党と自民党の合意で「政治改革四法」が成立、選挙制度改革・政党助成制度の導入に伴い政治資金規正法の大幅改正が行われた。
企業・団体からの寄附の対象が政党(政党支部を含む)と、政治家個人が政治資金の拠出を受けるべき政治団体としての「資金管理団体」に限定(当初は、資金管理団体にも企業・団体からの寄附が年間50万円まで認められていたが、2000年以降は禁止)され、保有金制度は廃止された。