もっと驚くのは、この会社は2016年の半ば頃から延々と営業・フリーキャッシュフローの伸びではとうてい正当化できないほど高い株価水準を維持してきたことです。
2016年以降のキャッシュフローと株価の乖離は、おそらくそれまで真剣なゲーマーだけをコア需要家としてそれなりに手堅いビジネスをしてきたエヌヴィディアが、複数の演算を並行してやることが得意なGPUは暗号通貨の採掘にも適しているとの評判が立ったため生じたのでしょう。
実際には暗号通貨採掘業者からの需要は、あまり大きな収益上積み要因にはならなかったのですが、CEOのジェンスン・フアンは「市場に期待を持たせることができれば株価はかなり長期にわたってファンダメンタルズで正当化できない高値を維持できる」という「教訓」を学んでしまったようです。
その後、2022年には生成AIモデルの初の実用化例としてオープンAIのチャットGPTシリーズが次々に一般公開され、生成AIモデルも複数の演算を同時に大量にこなす必要があるので、市場のエヌヴィディアに対する業績急騰期待はさらに高まりました。
ところが、運悪くこの年のエヌヴィディアの業績は不振をきわめ、自社の株価は半額以下、そしてS&P500株価指数も2割近く値下がりするほど米株相場全体のお荷物になってしまったのです。
ゲーマーや暗号通貨採掘業者相手に細々と事業を展開していた頃に比べて、生成AIブームに乗って上昇した株価が業績未達に終った際の反動ははるかに過酷でした。このとき、ジェンスン・フアンは一度公表した業績予想は何がなんでも達成しなければならないと決意を固めたのではないでしょうか。
ただ、同時にまだ市場の注目を浴びていなかった2002年に、循環取引という手法で業績を実際より良く見せる会計不正をおこなった際に、罰則が最高財務責任者(CFO)を辞任させるだけで済んだことも思い出していたはずです。