アレルギーの問題だけではなく、純粋に可愛いルックスやユニークな形質を作れば売れることに気づいて、ミックス犬を生み出すことを効率のいい商売と考える人たちが出てきたのです。

血統書のある純血種は、品種を維持するために近親交配を行ったり、遺伝的に近い犬同士で交配を進めたりした結果、遺伝性疾患を持って生まれるリスクを抱えています。現在、犬種ごとに起きやすい疾患がわかってきています。

また、環境省はブリーダーに対して、犬の交配年齢上限と生涯出産回数を定めています。犬の健康を第一に考えているのです。

しかしミックス犬は「商売になる」と考える人たちにとって犬の健康は二の次です。

日本より早くミックス犬のブームが訪れたアメリカでは、パピーミル(子犬工場)と呼ばれる悪徳犬舎が次々と摘発されています。商売優先で、犬の健康や遺伝性疾患などの問題は一切考えずに繁殖させる悪質さです。

悪質な子犬工場は次々と摘発されている(米国)
悪質な子犬工場は次々と摘発されている(米国) / Credit: Wikimedia Commons

パピーミルでは見た目の可愛らしさやユニークさだけが問題なので、大型犬と小型犬を交配するという珍しさだけで作られた犬もいて、これは体の大きさに比べて骨格が弱くなるなどのリスクで倫理的にどうなのと眉をひそめられることになります。

同じようなサイズ同士で交配されたミックス犬でも、性格や大きさには個体差が出ます。同じ親から生まれた兄弟姉妹でも異なってきます。そこは「見た目のバリエーションが豊富」ということになっています。

ミックス犬は、成長した後の容姿やサイズを両親の犬種から想像するしかありません。純血種でないため、両親のどちらの形質が大きく現れてくるのかは、成長してみないとわかりません。ちょうど両親の中間になるとは限らないのがミックス犬です。

しかし、両親の犬種から浮かび上がってくる健康上の注意点はホームページには書かれていません。これはミックス犬の抱えるリスクで、家族に迎えるなら知っておきたいところです。

すべてのミックス犬が求める形質を持って生まれてくるわけではない
すべてのミックス犬が求める形質を持って生まれてくるわけではない / Credit: Wikimedia Commons