単純に考えれば、アレルギーを誘発しにくい優れた盲導犬が生まれてくるはずでした。
しかし、実際はそう簡単なことではありませんでした。
3頭産まれた子犬のうち、アレルギーを起こさない毛質を持ったのは1頭だけだったのです。
その1頭が介護者に引き渡されてブリーダーの任務は終了したのですが、問題は残った2頭でした。
2頭は家庭犬として引き取り手を探すことになりました。そこでラブラドゥードルというユニークな名前で売り込まれたのですが、その目新しい種類の犬と可愛い外見で予想を超えた人気が出てしまったのです。

この時のブリーダーは「パンドラの箱を開けてしまった」と、ラブラドゥードルを作り出したことを激しく後悔しました。
「パンドラの箱を開けた」とは、異なる純血種2種類の犬を交配して、別の犬を作出したことを指しています。
ラブラドール・レトリーバーとスタンダード・プードルのいいとこ取りをしたくて交配してはみたものの、遺伝とはそうは簡単にいかないものです。
メンデルの法則でエンドウ豆の図を覚えている人も多いことでしょう。
つまり、盲導犬に向いていてアレルギーを誘発しない子犬は「安定して生まれてはこない」という事実があります。
遺伝とは、避けて通ることのできない残酷な問題だったのです。

ミックス犬をお迎えする場合のリスク
ミックス犬は求める外見・性質が安定して得られないだけでなく、両親から望ましくない病気などを受け継いでしまうこともあります。
親となる純血種の犬は、犬種によって出やすい遺伝性疾患を持っていることがあるからです。
しかし、後悔したブリーダーの念をよそに、ラブラドゥードルは「違う純血種同士の交配をすると商売になる」という発想につながっていきました。