さらに「生殖に影響を与える遺伝子変異」と「生殖に影響を与えない遺伝子変異」の2つが、それぞれ寿命に与える影響についても調べられました。
もしウィリアムズの拮抗的多面発現仮説が間違っているならば、生殖に関係ある変異もそうでない変異も、同じように寿命に影響(伸ばしたり短くしたり)するはずです。
しかし結果は違いました。
生殖に影響を与える変異はランダムに選ばれた変異に比べて、寿命に与える影響が5倍も高くなっていました。
また生殖に影響を与える変異が拮抗的多面発現仮説を反映する可能性に至っては7.5倍に達していました。
この結果は「生殖能力と寿命のトレードオフ」が人間にも存在していることを示しており、生殖能力に優れた人は寿命が短くなる傾向であることを示しています。
しかし、なぜ生殖能力を上げる遺伝子を持つと、短命になるのでしょうか?
競争という意味ならば、生殖能力を上げる変異と、長寿化する変異を両方持っている個体(たとえるならイケメンで長寿)が勝者になる可能性もあるはずです。
にもかかわらず、なぜ両者はセットにならなかったのでしょうか?
生殖さえできれば寿命はどうでもいい

なぜ生殖能力が高いと寿命が縮むのか?
生殖能力の強化と個体の長寿化はどちらも種の繁栄において重要な要素であり、どちらも獲得できるのならば、それに越したことはありません。
生殖と長寿が両立すると、数が増えすぎて食料が不足するという問題があるのは事実ですが、人類進化の大半は厳しい野生環境にあり、増えすぎることを心配するよりも、絶滅しないように踏みとどまることに多大な努力が向けられていました。
ですが、増えすぎを心配しなくていい状況においてですら、生殖能力と寿命の両立は困難だったでしょう。
というのも、自然選択においては、生殖のほうが遥かに重要な要素になるからです。