人間においても、冠状動脈疾患を起こす遺伝的変異を持つ人(短命の傾向)は、平均に比べてかなり多い子供の数を持つことが報告されています。
またフラミンガム心臓研究(FHS:心臓血管に関する大規模コホート研究)の報告によれば、女性の産んだ子供の数と女性の寿命の間に、有意な「負の相関」が観察されたことが示されています。
ただ、人間におけるこれらの報告がヒトという種全体において「生殖能力と寿命のトレードオフ」が存在する証拠となるかはまだ確かめられていません。
そこで今回、ミシガン大学の研究者たちはヒトにおいて拮抗的多面発現仮説が当てはまるかどうかを確認する、大規模調査を行うことにしました。
生殖能力と寿命のトレードオフはヒトにも起きていた

ヒトにおいて「生殖能力と寿命のトレードオフ」は起きているのか?
答えを得るため研究者たちは「UKバイオバンク」に登録されている27万6000人の人々の遺伝子を分析し、子供の数や健康状態、寿命といったパラメータとの相関関係を調査しました。
「UKバイオバンク」には人々の健康状態や生活習慣、寿命、子供の数、コーヒー派か紅茶派かといった食の好みまで多岐にわたるデータが保存されており、現代の遺伝分析において非常な有用な情報資源となっています。
すると、驚くべき事実が判明します。
子供の数をはじめとした生殖能力に関連する遺伝的な特徴(遺伝子変異)を持つ人々では、寿命が有意に短縮されていたのです。
(※分析では特に生殖能力に関連すると考えられる583個の遺伝子が重視されました。また生殖能力の強さは「子供の数」や「初めて子供を作った年齢」「初体験年齢」といった出生率や生殖履歴にかかわるデータで判断されました)
