繁殖のためなら寿命を捧げられるでしょうか?
2023年に米国のミシガン大学(UMich)で行われた研究によって、人間において生殖能力を強化する遺伝子を持つ人々は、寿命が短縮する傾向にあることが示されました。
これまで生物には「生殖能力と寿命がトレードオフ」の関係にあることが示されていました。しかし、ヒト全体において明らかになったのは今回の研究がはじめてとなります。
しかし、いったいなぜヒトを含む生物たちは、寿命を犠牲に生殖能力を強化するという過酷な道を進んだのでしょうか?
研究内容の詳細は2023年12月8日に『Science Advances』にて公開されました。
目次
- なぜヒトは老いて死ぬのか?
- 生殖能力と寿命のトレードオフはヒトにも起きていた
- 生殖さえできれば寿命はどうでもいい
なぜヒトは老いて死ぬのか?

なぜ私たちは老いて死ぬのか?
多細胞生命にとっては長く生き、より多くの生殖期間を過ごしたほうが有利なはずです。
また社会性を持つ人間やゾウなどでは「長老」の存在が共同体の知識を蓄積する役割を果たすため、老いて死ぬシステムはその点、不利に働きます。
そのため長寿化が有利という理論は一見すると、生物学的にも社会学的にも妥当に思えてきます。
しかし長寿化の利点を享受する前提条件として、生物たちは種内の生殖競争に勝たねばなりません。
長寿の遺伝子を持っていたとしても、種内でモテなければ子孫を残せず、せっかくの長寿遺伝子も途絶えてしまいます。
より俗っぽい表現をするならば
「100歳まで生きるブサメンと50歳まで生きるイケメンがいた場合、子孫を残せるのは半分の寿命しかないイケメンのほう」
「60歳まで生きるイケメンと30歳までしか生きない超イケメンならば子孫を残せるのはさらに半分の寿命しかない超イケメンのほう」