結果を吟味してから行動を決定する必要がある場面では、じっくり考える前に衝動的に判断してしまう特性が不利に働く可能性があります。
複雑な損得計算が伴う場合には、過度な“即断”が成果を下げる要因となり得るでしょう。
それでも、環境が「複数回試行できる」「移動コストが少ない」など、探索が有利になる条件であれば、ADHDの特性は進化的な適応とみなせるかもしれません。
実際、かつて人類が狩猟採集の生活を送っていた頃、身近にある「茂み」から食料を採取し、食べ尽くしたら別の茂みに移動するという行動は、実のところ複数回の試行が容易にできる状況でした。
森や草原のあちこちには、似たような茂みや果樹などの小規模な資源が点在しており、周辺環境を熟知している集団であれば「ここはもう取りきったから、少し先の場所を見に行こう」といった移動が簡単に行えたのです。
こうした条件下では、特定の茂みにこだわり続けるよりも、比較的容易に新しい場所へ何度でも試しに足を運び、効率が悪いと感じればすぐに切り上げる「こまめな探索」が可能だったと考えられます。
こうした環境はADHD的特質が有利になると考えられ、結果として、人類の中でADHD的特質が淘汰されずに現代まで残り続けた可能性も考えられます。
条件によっては、ADHD的特質が生存を有利にした場面もあったのかもしれません。
さらに、神経科学や遺伝学の分野では、ADHDに関連するドーパミンやノルアドレナリンなどの脳内物質が「新規探索や集中力の調整」に深く関わるという知見が積み重なっています。
今回の研究結果は、そうした神経科学的メカニズムが「早めに環境を切り替えて報酬を得る」という行動パターンと結びついている可能性を示唆します。
一方で、オンライン実験という形式やコロナ禍での実施といった特殊な条件もあるため、実際にADHDが診断されている人々にどこまで当てはまるか、また現実の生活環境で同様の結果が得られるのかは、今後さらに検証が必要です。