今回の結果からは、ADHD傾向のある人が「落ち着きがない」「集中力に欠ける」という一面的な解釈だけでは説明できない可能性が浮かび上がります。

多くの動物が採食行動を工夫するのと同じように、人間も資源を「どこまで取り続けるか」と「いつ新たな場所へ移るか」を絶えず判断しています。

そのとき、ADHD特有の衝動性や飽きっぽさが「常に新しい可能性を探る」行動に結びつきやすいと考えられます。

実際、今回のオンライン実験でも、早めに茂みを離れることで得られる報酬が増え、結果的にADHD傾向が強い人ほど成績がよかったのは興味深い点です。

ただし、こうした特徴がどんな環境でも有利に働くとは限りません。

例えば、複数の選択肢をじっくり比較しなければならない課題や、一度決断すると簡単には戻れない状況では「早く見切りをつけて移動する」行動がリスクになる可能性もあります。

たとえば本研究で用いられたように「茂みを離れるか残るか」の二択しかない状況では、ADHD的な特性が早期の探索行動を促すことで報酬率を高める可能性があります。

しかし、実社会や別の実験では同時に複数の選択肢が提示され、「どれが最も有利か」を学習しながら行動しなければならないケースも多いです。

このような場合、ADHD的な特性は不利に働きます。

たとえばFrankらの研究によると、複数の選択肢それぞれに報酬の確率が設定されている強化学習課題で、ADHDの人は選択を頻繁に切り替えすぎるため、どの選択肢が高報酬かを十分に学習できず、最終的な成功率が下がる傾向があります。

つまり、複数のオプションが常に並立している状況では、ADHDの衝動的スイッチが情報収集を妨げる結果になりやすいと考えられます。

またDekkersらの研究では、「安全だが低報酬」「リスクがあるが高報酬」といった選択肢が提示される課題において、ADHD傾向の強い人は期待値の計算・比較が十分行えず、高い期待値の選択肢を選ぶ頻度が低いと報告されています。