(2) 貿易不均衡の是正:EUや中国などの貿易相手国との間で生じている貿易不均衡を是正し、公平な貿易環境を構築することを目指す

(3) 外交的圧力の手段:関税政策は通商上の目的だけでなく、外交問題の解決手段としても位置づけられる。例えば、隣国との関係改善や特定の政策変更を促すために関税が利用される。

(4) 歳入の増加:関税は、連邦政府の歳入源としての役割も果たす。トランプ大統領は外国からの関税収入を増やすことで、国内の税負担を軽減し、財政赤字の削減を図る意向を示している。

問題はそれぞれの割合である。(1)や(2)の方向性についてはあまり不確実性がないし、幅広く予想されてきた。問題は(3)と(4)であり、特に(3)の中でカナダ・メキシコへの強い圧力は市場参加者の想定を超えた。

メキシコなどは不法移民の流入源なので「特定の政策変更」を求める理由があるが、カナダに対する脅迫が多くの人々の予想を超えた背景として、それがほぼ完全な言い掛かりであったことが挙げられる。カナダから米国に流入するフェンタニルや不法移民は全体の1%にも満たない。従ってメキシコが取り締まりにかなり協力的であるのに対して、カナダが何をしたらいいのか分からない雰囲気を醸し出しているのは仕方がないところである。

ここでIEEPAの枠組みを思い出すと、各省庁に頼らない広範で迅速な関税導入には「国家非常事態」を宣言する必要がある。不法移民とフェンタニル対策を強制するための武器として関税が利用されているのか、関税を徴収するのが目的で不法移民とフェンタニルがIEEPA発動のために利用されているのか、必ずしも自明ではないのではないか。

歳入を維持するために一定額の関税を海外から徴収する必要が先行しているとすれば、「外交的要求」のゴールポストが動く可能性も考えられるのではないか。

関税のスケジュール

いずれにしろ、今後の様々な関税が発動されるタイミングは重要となる。ポジションを持っていて直撃されたら目も当てられない。