例えば「不公平な貿易慣行」が問題なら1974年通商法第301条が適用される可能性が高く、その場合はUSTRによる6ヶ月以上の調査や相手国との協議を経た後になる。

鉄鋼とアルミ

以上の各地域への攻撃とは別に、第一次トランプ政権時から始まっていた鉄鋼・アルミニウムへの関税が強化されることになっている。第一次トランプ政権では鉄鋼25%、アルミ10%の関税が導入されていたが、これを鉄鋼25%(据置き)、アルミ25%に引き上げる。

またこれまでの国別・品目別の適用除外制度が撤廃された。第一次トランプ政権の時と同様、根拠法は1962年通商拡大法第232条である。セクション232の適用は調査を必要とするが過去の調査結果を流用できるため、第二次トランプ政権は追加関税をスピーディーに打ち出すことができた。

鉄鋼・アルミ関税はラストベルトに対してMAGAをアピールするのに効果的、というよりそのための措置であり、恐らく諸外国とのディールの対象や駆け引き材料にはならない。

相互関税

これらの関税の枠組みとはまた別に、トランプ政権が選挙公約に掲げてきた考え方で、日本も対象になり得る「相互関税」も話題になってきた。

これは「外国政府がある品目に課している関税率が、米国の同品目に対する関税率よりも著しく高いと大統領が判断した場合、または非関税障壁が単独あるいは関税と組み合わさって著しく高い負担を課している場合に、外国が課している関税率と同率、または外国が課している非関税障壁の実効税率と同率の関税を米国への輸入時に課す権限を大統領に付与する」というものであり、第二次トランプ政権はこれを「トランプ互恵通商法」としての立法を目指す。

立法を目指すということからも分かるように、現時点で大統領が他国の関税率に合わせて関税を引き上げる明確な権限を持つ法律は存在しない。

しかし2/13にトランプは各部署に「相互関税に向けた検討」を命じた。これは国ごとに提案される個別関税の集合体になるようである。作業部局として商務部とUSTRが指名されていることは、国や分野によってセクション232とセクション301を使い分けるということを意味すると思われるが、調査期間が足りない気がするのは巻かせるつもりなのだろうか。