先進国同士の関税率は概して低い。例えば日本の米国からの工業製品の輸入に対する関税はほぼゼロであり、せいぜい農産品の関税が高いくらいであるため、相互関税は基本的に日本には関係ない話題である。EUも自動車の10%などは高く見えるが、平均関税率は3.95%であり米国のEUからの輸入にかかっている3.5%と大差ない。

伝統的に関税率が高いのは新興国であり、これはWTOが開発途上国に対して特別、差別的な待遇を与えたため許容されてきた。また消費税や非関税障壁もカウントされるとの考え方もあり、その場合EUは更に不利になる。

EUが自動車関税を引き下げる用意があると表明していることから分かるように、相互関税のナラティブの下ではいわゆる「ディール」に繋がる余地が比較的大きく残されている。そもそも国ごとの相互関税を定めるのは極めて煩雑な作業となる。

医薬品・自動車・半導体

4/2開始を目指す医薬品・自動車・半導体への25%関税計画は、一連の関税の中でも最も重大かつ透明性の低い措置である。

初登場は2/13の「相互関税に向けた検討」と同時であり、2/18に改めてトランプが宣言した。自動車だけ4/2と明言されており、残りの二分野はそこから1年かけて決めていくとされている。

根拠法は不明であり、半導体などは国防上の脅威としてIEEPAを持ち出すことも可能に見えるが、基本的にはセクション232やセクション301とのハイブリッドになるのだろう。この関税については4/2までの期間にかけて徐々に具体的に明らかにされていくと思われる。

関税の位置づけ

第二次トランプ政権になって五月雨式に打ち出された関税の背景や目的を整理すると、概ね下の四種類に整理されることについて異論は少ないだろう。

(1) 国内産業の保護と雇用創出:鉄鋼やアルミニウム産業など、伝統的な製造業を保護し、これらの産業における雇用を維持・拡大すること