そして、その公約を無理に守ろうとすればするほど、相互に矛盾が生じるということも大きなリスクだ。トランプ氏の改革は、アメリカでは、flooding the zone(一帯が水浸し)と言われることも多いが、一挙に色々と改革しているという肯定的見方もできるが、範囲が広すぎてそれこそ水浸しで大変だとも言える。

USAID(米国の海外援助機関)をバサッと切るのは良いが、今まで米国が援助していた先に、早速中国が入り込むという構図になっており、関税その他で中国を封じ込めようというトランプ政権の大戦略と逆の結果、中国の存在感の伸長という事態を産むことになりつつある。

ヒトラーやナポレオンは、電撃的に国内改革や対外遠征で成果を収め、一時は国内的にも国際的にも英雄視された。乱暴に言えば、戦前のわが国なども、それまでの日英同盟やワシントン条約下での英米との協調志向から、ヒトラー率いるドイツの電撃的拡大に惑わされて(それだけではないが)、「バスに乗り遅れるな」とばかりに、日独伊三国軍事同盟への道に乗り換えたとも言える。

トランプ氏の改革は、今は輝かしく眩しく見える部分もあるが、無知なだけにナイーブに突き進んでいるという面も多分にあり、評価する時間軸を長く伸ばした際にどうなるかは分からない。私見では、早晩行き詰まりを見せる気がしている。

2. トランプ改革の本質

世界は、目まぐるしく発動されるトランプ氏の数々の改革ダマに翻弄されているが、その数多ある改革ダマを眺めながら浮かび上がってくる本質はなんであろうか。私は、結論としては、トランプ改革の本質とは「中低所得層への寄り添い」だとみている。主に中西部などに住む、従来からの典型的な白人のアメリカ人の没落を救う救世主としての位置づけだ。

つまりは、彼の改革は、「白人アメリカ人の中低所得者層への寄り添い」を中心に見ると分かりやすいと思っている。減税をし、財政支出もして、中低所得層に寄りそうこと。そのことこそがトランプ氏の改革の基底をなしている。