粒子の世界でも、表面上は違う現象が、実はこの「隠れた対称性」によって同じルールで動いている可能性が考えられています。

言い換えれば、もしそんな“余剰次元”があれば、グルーオンとヒッグス粒子の違いは、実は表面上の見た目だけで、根本では同じルールに従っているのかもしれない、ということです。

2つ目は幾何学的アプローチや「粒子散乱のDNA」と呼ばれるものです。

これはざっくり言うと、衝突後に飛び散る粒子の様子から法則発見の活路を見いだす方法です。

「膨大な可能性の一つ一つを調べる」代わりに、粒子のエネルギーや運動量などの“パターン”を“文字”として定義し、それらを組み合わせて“単語”を作り、さらに単語を集めて“文章”を構成するように数式をまとめていくイメージです。

「飛び散る粒子の“散乱”に何の意味もないのではないか?」と思うかもしれませんが、違います。

これらのパターンをよく調べてみると、じつは不思議な規則性が隠れているとわかってきました。

研究者たちも初めは信じられませんでしたが、何千、何万という計算を重ね、この対応関係が偶然ではなく必ず成り立つことを確認しました。

ここで出てくるのが「粒子散乱のDNA」と呼ばれるようになった概念です。

たとえばDNAが「A、T、G、C」という4つの文字を組み合わせて生命の情報を作っているように、粒子の衝突結果も決まった「文字(letters)と単語(words)」に分解することで複雑な式を効率よくまとめることが可能になると判明しました。

しかも、この“文字の並び”には、まるで遺伝子暗号のような「特定の並び方は許されない」といった制限があることも分かりました。

そしてこの制限が、今回の対蹠双対性とも深く関係しているのです。

この新しい方法で計算を進めると、ある粒子の衝突結果を示す式を、文字の並び順をひっくり返すだけで、まったく別の衝突結果を示す式に変えられる場合があるとわかりました。