「二重性」という言葉を聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。
たとえば光が「波」として振る舞うのに加えて、「粒子」としての性質も持ち合わせる――こうした現象は物理学の授業でも有名ですよね。
このように、もともとは別々だと思われていた物理的な概念や理論が実は同じ構造を持っているとわかると、人々は驚きとともに新たな視点を得ることになります。
これが物理学でいう「二重性(デュアリティ)」です。
これまでにも、重力が関係する理論とそうでない理論のあいだで数学的な対応関係があることが見つかったり、複雑な衝突実験の結果が実は別の形で説明できたりと、いろいろな二重性が報告されてきました。
そうした例の一つとして知られる「AdS/CFT対応」は、いまでも多くの研究者が熱心に探究するテーマとなっています。
二重性は「物理を統一的に眺める手がかり」を与える非常に大切な性質なのです。
ところが最近、素粒子の世界でも新たな二重性が浮上し、物理学者たちを大いに悩ませています。
名前は「対蹠双対性(たいせきそうついせい)」と言い、いままで考えられていた力の区分や粒子の違いをまたいで、不思議な一致が見られるというのです。
発見の瞬間、研究者たちは「なぜこんなにも似ているのか」と信じられなかったそうです。
従来の物理理論では簡単には説明できないその現象に、「もっと深い法則や構造が隠れているのではないか?」と期待が膨らむ一方で、まだ正体がはっきりしないため、みんなが頭を抱えているわけです。
では、いったいどんな実験や計算の過程で、対蹠双対性が見つかったのでしょうか?
そして「もっと深いところにある共通構造」とは、いったいどんな姿をしているのでしょうか。
本コラムでは、そうした疑問を追いかけながら、“二重性”というキーワードを軸に、最先端の素粒子物理が描き出す新しい可能性を探っていきます。