話の最後に、ゼレンスキーが「どんな外交をしろと?」と問いかけ、ヴァンスが「無礼だ!」と返す、日本のTVでもおなじみの場面が来る。しかし正確には、ヴァンスはその時こう言っている。

I think it’s disrespectful for you to come into the Oval Office to try to litigate this in front of the American media.

私はあなたが米大統領の執務室に来て、アメリカのメディアの前で、これ(あなたの主張)を litigateするのは無礼だと思う。

litigate とは「訴訟を起こす、法廷に持ち込む」の意味で、ヴァンスはイェール大学のロースクール卒だから、辞書通りの語義で使ったはずだ。つまり、ゼレンスキーが話した内容は、あくまで「原告側の言い分」に過ぎず、客観的な事実ではないという趣旨だろう。

実際、反発したゼレンスキーに対して、ヴァンスは ”You bring them on a propaganda tour”(あなたはプロパガンダで人々を操っている)とも言っている。要は、トランプを映しに米国のTVカメラが集まる機会を、「ウクライナの主張」を広めるメディアジャックに使うことは許さない、というのが、ヴァンスの言い分だ。

このことが持つ意味は、きわめて重大である。

2022年2月にロシアが行ったのが、侵略であることは明らかだったので、もしウクライナに有利なストーリーになるのなら、多少は「盛った話でも聞こう」とするのが西側世界のコンセンサスだった。ヴァンスとトランプは今回、そうした特別扱いをやめますと、TVのリアリティ・ショーを通じて宣言したわけである。