この中、鹿島の新スタジアム建設計画を明かしたメルカリの小泉文明社長に対しサポーターは「新スタジアム造るより強化費に回せ」との横断幕を掲出し、“新スタ反対”を表明した。この意見がファン・サポーターの総意とは断言はできないが、猫も杓子も「新スタ造れ」と叫び続けるJリーグのサポーター界隈の空気をいさめた。

自治体にとっての建設リスク
名古屋グランパスのホーム、豊田スタジアムの土地購入費含め約603億円の建設費用は、豊田市およびトヨタ自動車とその関連企業、豊田自動織機などが負担している。豊田市を所有者に定めた上で、管理者を株式会社豊田スタジアムとしているが、同社の主要株主にはトヨタ自動車も名を連ねている。
昨2024シーズン最終節とラリージャパン(ラリー競技の世界選手権の日本ラウンド)がバッティングしてしまい、結果、名古屋はJ1最終節を岐阜の長良川競技場で戦うことになった。この出来事によって、「豊田スタジアムはトヨタ自動車のもの」というイメージが固定化された。
実際問題として、自治体主導でサッカー専用スタジアムを建設するにはリスクも伴う。シーズン中でもせいぜい月2~3試合のために何百億円もの建設費とともに、年間数億円にも上る維持管理費が掛かる。試合がない日でも「芝の養生期間」という名目で市民に開放されることはない。
例え税金を使ってサッカー専用スタジアムを完成させたとしても、そこをホームとするJクラブとそのクラブのサポーター以外には何のメリットもないのだ。サポーターが良く口にする「新スタ建設によるアウェイサポーターの来場に伴う経済効果」など、完成からせいぜい1~2年で消え失せてしまうものだ。

Jクラブが公共財と認められるには
現在進行形で新スタジアム建設計画が具体的に進んでいるのは、いわきFC(福島県いわき市)や、南葛SC(葛飾区新スタジアム)、代々木公園内に計画されている新スタジアムくらいだが、これらすべてが自治体主導によるものだ。