また、今2025シーズンからJ2を戦っているFC今治のホーム、アシックス里山スタジアム(竣工当初は「今治里山スタジアム」)も民間資金で建設された。運営会社の「株式会社今治. 夢スポーツ」の会長を務める岡田武史元日本代表監督が音頭を取り、約40億円の建設費用をふるさと納税制度による寄附、企業版ふるさと納税による寄附、 里山プレートの購入による寄附、および運営会社の第三者割当増資なども実施し、資金調達した。

2016年に開場したガンバ大阪のホームスタジアム、パナソニックスタジアム吹田(市立吹田サッカースタジアム)のような自前でのスタジアム建設に近い前例もある。寄付金などを含む独自の資金調達で建設した上で、吹田市に寄贈するという形で、クラブとサポーター、企業が協力した。

大口スポンサーがついている長崎はいざ知らず、竣工時にはJ3にいた今治でさえも「民設民営」という自前でのホームスタジアムを完成させた。にも関わらず、J各クラブのサポーターは依然として、新スタジアム建設を自治体頼みにしている。


浦和レッズ 写真:Getty Images

浦和の自前スタジアム建設の可能性について

現状、Jリーグ全60クラブの中で自前のスタジアムを所有しているのは、前述の2クラブ以外では、ジュビロ磐田(ヤマハスタジアム)、柏レイソル(三協フロンテア柏スタジアム)くらいだ。

その他は自治体所有のスタジアムを「借りている」状態にある。スタジアムの運営や管理を請け負う指定管理者制度の適用を受けているのも、鹿島アントラーズ(県立カシマサッカースタジアム)とガンバ大阪(パナソニックスタジアム吹田)くらいだ。

日本一のビッグクラブ浦和レッズでさえも、日韓W杯の“遺産”(2002年日韓W杯の開催場として建設された埼玉スタジアム2002)を使わざるを得ない状況だ。

浦和は同スタジアムの指定管理者に名乗りを上げたにも関わらず落選した。従前までの指定管理者「埼玉スタジアム2002公園マネジメントネットワーク」という団体が野外ライブなど多目的化を目指す姿勢に反発した浦和が、同団体から脱退した上で「サッカーのみでの使用」にこだわった末、その主張が埼玉県に届かなかったというのが事の真相のようだ。