二ホンミツバチが分蜂し、営巣したのが事もあろうに仏像。しかも二ホンミツバチにとって都合のよい出入り口までついていました(阿形像の開いた口)。

木のうろに営巣する二ホンミツバチ
木のうろに営巣する二ホンミツバチ / credit: Wikimedia Commons

これは二ホンミツバチにとって、対馬の伝統養蜂と何も変わらないどころか、集めた蜜を取られることもありません。さらに持ち主の當麻寺が殺生をはばかったことで、仏像が長期に渡って二ホンミツバチに安住の地を与え続けたのです。

この珍事は葛城市による二ホンミツバチの強制的な引っ越しで幕を閉じ、汚損した仁王像は修復されることで一件落着となりました。

これがもし強制的な引っ越しではなく、採蜜をして「仁王蜜」などと命名し仏前に供え続けるのも結構ありがたいことであったかもしれず、そうした案は出なかったのかは若干気にならなくもありません。

しかし結果として二ホンミツバチを守ってくれた當麻寺、葛城市の繁栄と、今後の二ホンミツバチたちの安寧を仏に祈りたいと思います。

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参考文献

仏教彫像の制作と受容
https://amzn.to/4k53EG8

元論文

葛城市 當麻寺仁王像修理事業について
https://www.city.katsuragi.nara.jp/soshiki/rekishihakubutsukan/4/6/7379.html

ライター

百田昌代: 女子美術大学芸術学部絵画科卒。日本画を専攻、伝統素材と現代素材の比較とミクストメディアの実践を行う。芸術以外の興味は科学的視点に基づいた食材・食品の考察、生物、地質、宇宙。日本食肉科学会、日本フードアナリスト協会、スパイスコーディネーター協会会員。

編集者

ナゾロジー 編集部