二ホンミツバチも分蜂を行い、群れは引っ越し先を探します。対馬など伝統養蜂を残している地域では、このように分蜂をした二ホンミツバチを「ここに好条件の新居を用意しましたよ」と呼び寄せているのです。

自然の中では見つけにくく競争率も高い天然の木のうろよりも広い場所を人があらかじめ準備しておいてやることで二ホンミツバチを呼ぶ。養蜂家にとっても二ホンミツバチにとっても、win-winの関係と言えるかもしれません。

人は新居を用意し、ミツバチは蜜を提供する。実際は蜜を奪われているわけですが、採蜜し過ぎるとミツバチは逃げてしまい戻ってこないそうなので、ギブアンドテイクの関係が成り立っているといえるでしょう。

皆さんも分蜂を見かけたら、殺虫剤など使わずそっとしておいてやってください。ミツバチは引っ越し先を探しているだけなのですから。

二ホンミツバチの分蜂。新しい女王に巣をゆずり、旧女王は群れを引き連れて新しい営巣場所を探す
二ホンミツバチの分蜂。新しい女王に巣をゆずり、旧女王は群れを引き連れて新しい営巣場所を探す / credit: Wikimedia Commons

そして二上山の二ホンミツバチです。當麻寺は二上山山麓の自然豊かな土地に建てられています。お寺があることで守られてきた豊かな自然と動植物、昆虫たち……。

そう、その昆虫たちの中には二ホンミツバチもいたのです。そして仁王像は空洞の木彫仏。豊かな自然の中で順調に巣を大きくし、新しい女王も誕生したところで旧女王は群れを引き連れ、引っ越し先を探して旅立ちました。

何日間、木のうろを探して飛んだでしょう。やがて二ホンミツバチたちは最適な木のうろを持った安住の地を見つけたのです。そこは當麻寺の仁王門に安置された仏教のガーディアン、金剛力士像の阿形像でした。

阿形像は口を開いているので、二ホンミツバチは空洞になっている頭部に入ることができました。これがまた絶妙に二ホンミツバチが通るのにちょうどいい高さに開いているのです。

像を制作した仏師はそんなことは意図していなかったと思いますが、二ホンミツバチにとっては、まことに都合のよい出入り口として映っていました。