一方で、魚粉や魚油をベースに、さらに大豆由来のたんぱく質や植物性油脂などを加えた半湿潤タイプやペレットタイプの飼料開発が試みられており、すでに一部の研究では成長度合いが生餌と同等かそれ以上の成果をあげた例も報告されています。

生餌だけでなくペレット状の餌でもマグロを大きくできる
生餌だけでなくペレット状の餌でもマグロを大きくできる / Credit:Canva

しかし、マグロほどの高速代謝魚だと、理想的なアミノ酸バランス・脂肪酸バランスを保つのが容易ではなく、未解決の技術課題も多いようです。

こうした中で特に注目されるのが、FCRの大幅な改善に向けた取り組みです。

仮にマグロのFCRを半分に抑えられれば、コスト削減や環境負荷の軽減、安定的な供給体制の確立などに大きく寄与します。

しかし実際には、マグロの餌を燃費だけで評価すると、どうしても数字が大きく、効率が悪く見えます。

これはマグロ特有の高い代謝と大きな活動量による宿命といえます。

だからこそ飼料研究は、超大食漢の体内にピタリと合う栄養設計を模索し続けているのです。

魚粉自体の品質にこだわるだけではなく、DHA・EPA比率の高い魚油や、免疫・抗酸化機能を高めるためのビタミンE・Cの添加量など、細かな調整が鍵を握ると考えられています。

今後はマグロ養殖における効率的かつ持続可能な餌の開発はますます重要性を増していくでしょう。

高品質なマグロの需要は日本だけでなく欧米やアジア各国でも拡大しつつあります。

この需要に応えるために、より低FCR・高成長を実現する飼料技術の確立が必須であり、各国の研究機関や水産企業が盛んに新技術を模索しています。

マグロは高速遊泳と体温維持という特異な生態をもつため、他の魚と比べても圧倒的にエネルギー消費量が大きく、その結果として大量の餌を必要とします。

FCR(飼料要求率)の面でも非常に高い数値が示され、「超大食漢ぶり」が際立つ生き物です。

こうした燃費の悪さこそがマグロ特有の持久遊泳と力強さを支える源ですが、一方で経済的・環境的な持続性の課題でもあります。