大型個体になればなるほど、その量は一層増大するともいわれています。

マグロの赤筋は、持久力に優れた長距離走者の筋肉と例えられます。

赤筋では脂質とタンパク質が大量に消費され、しかも非常に活性の高い代謝反応が起こるため、海中を泳ぎ回る際の燃費が悪くなるわけです。

さらに、遊泳を止めると呼吸さえままならないという制約がある以上、絶えずエネルギーを使い続けることになるのは当然の帰結でしょう。

とくに赤身部分の多いクロマグロの仲間ほど(太平洋クロマグロ、ミナミマグロなど)、脂質の利用効率やタンパク質摂取のバランスに大きく依存し、高い成長や長距離回遊をこなします。

このような高代謝と局所的恒温性がもたらす「常時・高速遊泳生活」は、マグロの活動範囲を広げる一方で、餌に含まれる栄養要件を格段に高めることにもなりました。

マグロの養殖場などでは、低水温下でも飼料の摂取量が減少したり成長が止まったりするという観察結果がある一方、高水温期にはむしろ餌摂取量が10%を超えることもしばしば報告されています。

これほど顕著な季節変動や温度感受性が示されるのは、マグロの生理機能が水温と遊泳速度、さらには体格サイズによって多彩に変化するからにほかなりません。

マグロは「酸素を取り入れるために泳がざるを得ない」「赤筋や血流システムで身体の一部を温め続け、冷たい海域でも活動を維持する」という特性によって、ほかの魚類とは一線を画すほどの高エネルギー消費生活を送っています。

こうした背景を知ると、私たちが普段口にしているマグロの刺身やお寿司も、驚くほどの燃費の悪い魚の結晶だということが感じられるでしょう。

FCRが示す「超大食漢」ぶり

マグロのエネルギー要求量の大きさは、飼育現場でのFCR(Feed Conversion Ratio)という数値を見ればさらに明確です。

FCRとは「魚を1.0kg成長させるために、何kgの餌が必要か」を示す指標です。