米国側は次のように表明した。米国は,台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論をとなえない。米国政府は、中国人自らによる台湾問題の平和的解決についての米国政府の関心を再確認する。
この「認識している」との英語は「acknowledge」であって、「承認する」を意味する「accept」ではない。このことは、「米国が中華人民共和国政府を中国唯一の合法政府であることを承認」した、79年1月1日発出の「外交関係樹立に関する共同コミュニケ」においても、再確認された(「8・17コミュニケ」の日本外務省仮訳)。
前記の「8・17コミュニケ」とは、1982年8月のレーガンと鄧小平の共同コミュニケだが、これの論点は米国の対台湾武器売却問題にあった。詳細は4年前の拙稿「台湾への武器売却:百歳の天寿を全うしたシュルツ元国務長官の遺産」をご覧願いたいが、この時レーガンと鄧は「台湾関係法」について議論し、心配した台湾の蒋経国にレーガンが「6つの保証」をしたのである。
9項目にわたる「8・17コミュニケ」の4項と第5項はこう書かれている。
4. 中国政府は、台湾問題は中国の内政問題である旨を重ねて言明する。中国が1979年1月1日に発した「台湾同胞に告げる書」は平和的祖国復帰へ向けて努力するとの基本的政策を規定した。中国が1981年9月30日に提示した9項目提案は、台湾問題の平和的解決に向けて努力するとのこの基本的政策の最も顕著な努力の表われであった。
5. 米国政府は、・・・1979年1月1日に発出された「台湾同胞に告げる書」及び1981年8月30日に中国から出された8項目提案に示されている台湾問題の平和的解決のため努力するとの中国側の方針を理解し、評価する。以下略
レーガンは国務省が同コミュニケを発表するに当たり、こう記された書簡を添えた(「本当に『中国は一つ」なのか』ジョン・J・タシクJr著 草思社 2005年12月第一刷)。なお、これの最後の一文は「6つの保証」項目の一部である。