こうした事例は、進化の不思議と奥深さを強く感じさせてくれます。

今回の研究は、たまたま見つかった数匹の幼虫を詳しく調べたところから始まりましたが、それでも謎はたくさん残されています。

幼虫がシロアリにうまく擬態しているのはわかったものの、実際に何を食べているのか、どんなタイミングで成虫になるのか、成虫になったあとはどう行動するのかなど、わからないことだらけなのです。

実験室での飼育は難しく、成虫になる前に死んでしまうことも多いそうです。

それでも研究者たちは、シロアリとの深い絆をどのように保っているのかを明らかにしようと、これからも調査を続けていくといいます。

また、同じような現象がほかの地域や別のシロアリの種類でも起きているのかどうかも、大きな関心事です。

実際に調査を進めていけば、自然界がいかに多様で、まったく予測がつかない進化の物語を秘めているかを、さらに実感できるかもしれません。

そして、私たちの知らない不思議な昆虫の暮らしが、まだまだあちこちに潜んでいるのだと思うと、わくわくしてきますね。

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元論文

Blow fly larvae socially integrate termite nests through morphological and chemical mimicry
https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.01.007

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部