疫学分析の他の方法としては、SCRIデザインなどの偶発性の検証があります。コホート研究には限界があり、それを補完できるのが偶発性の検証なのです。この問題は、英語論文にまとめて発表しています。ただし、日本では報告バイアスがないようにデータを収集することが難しいため、偶発性の検証は現実には困難です。

ただし、接種後死亡者の全数調査は自治体の協力があれば、ある程度までは偶発性の検証が可能です。全数調査であれば報告バイアスはなくなります。

私は、札幌市が提供してくれたデータを用いて、論考1と論考2を公開しています。札幌市は、死因のデータは提供してくれませんでした。このデータが提供されれば、更に詳細な分析が可能となります。政府であればこれらのデータの入手は容易ですから、政府が接種後死亡の全数調査をするべきです。

疫学的分析の問題点を提示することも有用

現在実施されている疫学的手法には限界があり、検証として不十分であることを指摘することも有用です。既に述べたように関連性の検証のために主に実施されているコホート研究には、原理上の限界がいくつかあり、改善の余地があります。この問題も英語論文で指摘しました。

まず、コホート研究で有意差が認められなかった場合には、関連性がなかったと解釈することはできません。

次に、この手法には、未接種群の有害事象の発生率が高い場合には、有意差が生じにくくなるという原理的欠陥があります。具体例を一つ挙げれば、流産です。10,000件/100万接種という非常に高い発生率でもコホート研究では有意差が認められないのです。したがって、コホート研究で有意差が認められない場合に、有害事象の発生率は無視できるほど発生率が低いと必ず解釈できるわけではないのです。

一流のジャーナルであっても、methodのところを丹念に読みますと、奇妙なことが時々あります。具体例を一つ挙げてみます。