また、高齢者など特定の集団を対象とした長期的な観察研究では、数日から数週間にわたる孤立がうつ症状や免疫機能低下などのリスクと関連するという結果も得られています。

ところが、「寂しさを感じるまでには数日が必要」というイメージとは裏腹に、もっと短時間で寂しさが発生することを示す実験が存在します。

その代表例が、オンライン上の「排除」や「無視」を模擬する Cyberball実験(Williams, 2000 など)です。

この実験では、たった数分間、被験者が“他者からボールを回してもらえない”という状況を作り出します。

すると、わずかな時間でも参加者は強い拒絶感や寂しさを訴えることがわかっています。

この結果は、寂しさが単純に「どれだけ長くひとりでいたか」という時間的な要因だけで説明できるわけではないことを示唆しています。

むしろ、「自分は排除されている」「必要とされていない」という主観的な認知が生じると、数分から数秒という極めて短いスパンでも、心は即座に寂しさを感じ始めるのです。

逆にいえば、どんなに物理的・時間的に孤立しているように見えても、自分を気にかけてくれる存在や“いざというときに助けてくれる人がいる”という安心感があれば、寂しさは必ずしもすぐに生じるわけではありません。

つまり、寂しさは必ずしも「時間で決まる」ものではなく、心理的・社会的な要因が大きく影響しているのです。

数日かけてジワジワと募ることもあれば、たった数分の排除で瞬時に感じる場合もあります。

この点を理解しておくと、「まだそんなに時間が経ってないのに寂しいと感じるのはおかしい」という自己否定的な思考に陥らず、「人とつながりたい」「必要とされていたい」という人間の本質的な欲求が、思いのほか早く不安を生じさせることがあるのだと気づくことができるでしょう。

分岐点は個人差が大きい

また同じ「ひとりでいる状態」でも、それを快適に感じるか、寂しさを強く感じるかは、本人の捉え方や状態によって変わります。