こうしたストレスは、適度な交流であれば活力を生みますが、過度になれば疲弊や倦怠感を招く一因となり得ます。

そこで、適切なタイミングで一人の時間をとることが心理的な回復をもたらす場合があります。

Coplan & Bowker (2014) の『The Handbook of Solitude』でも、孤独(solitude)はストレスマネジメントの一環として捉えられ、たとえば瞑想や日記を書くこと、自然の中を散策することなどが有効な方法として紹介されています。

重要なのは、孤独を「自ら選択する」という点です。

生活に追われてひとりの時間を作れない、あるいは無理やり孤立させられている状態と、自分の意思でスケジュールを組んで休息を取る状態とでは、まったく意味が異なります。

自発的で計画的な孤独は、仕事や対人関係で溜まったストレスをクールダウンし、気分をリセットするのに役立つのです。

さらに孤独は自己アイデンティティーの確立にも役立ちます。

自分自身との対話を深める時間は、アイデンティティを確立するうえでも大きな意味を持ちます。

日頃、私たちは家族や友人、同僚など周囲の期待に応えたり、組織の中での役割に従ったりしながら生活しています。

これは社会生活において必要不可欠なことですが、あまりに役割が多いと「本当の自分はどこにあるのか」と見失いそうになることもあるでしょう。

孤独の時間を使って、自分自身の価値観や目標、やりたいこと、好きなことをじっくり考えてみると、「実は自分はこんな考えを大切にしていた」「こんな夢があった」といった気づきが得やすくなります。

これがアイデンティティの再確認や自己肯定感の向上につながり、日常生活でもぶれない芯を持って行動できるようになるのです。

このように孤独には多くのメリットがあります。

もちろん「常にひとりでいればよい」というわけではありません。

過度の孤立は寂しさ(loneliness)を増幅させ、心身の健康リスクを高めることにもなるからです。