中立的な立場からの表現は分断を和らげる可能性がある一方で、強いバイアスを持つ人々からすると「曖昧」や「自分の味方ではない」と映り、やや敬遠される可能性があります。
極端な二極化が進む環境では、明確に「自分たちの側」を打ち出さない表現が「自分たちを理解していない」とみなされ、かえって信頼度を下げてしまうこともあります。
そのため、現実では過激な思想を持つ人が評価されるという危険も生じます。
4:情報解釈のバイアス(Confirmation Bias)
「自分が信じたい情報は信じやすく、望まない情報は排除しがち」という特徴は、日常生活のあらゆる場面で見られます。
政治的に偏った言葉を使うと、聞き手はその言葉を「自分の認知フレーム」に当てはめて解釈し、ますます先入観を強化する傾向にあります。
今回の研究でも、党派的な用語を使った説明にさらされた参加者ほど、出来事への評価がその人の既存の政治的傾向に沿ってより極端になる、つまり分極化が進むことが示唆されました。
また、自分にとって「しっくりくる」言葉遣いは、深く考えずとも理解できるため、認知的な負担が小さく感じられます。
そのため、認知的リソースが限られている人々では、常に「しっくりくる」慣れた言葉や解釈に流され、より深みのある話の理解が阻害される可能性もあります。
5:「自分たち対彼ら」という集団心理
政治的立場が異なる相手への不信感は、「集団外言語」を使われることでさらに強化される可能性があります。
これは、社会心理学でいう「内集団(in-group)と外集団(out-group)の区別」が明確になることで、自分の側と反対側を強く意識し、外集団をより拒否・批判しようという心理が働くためです。
イングループへの忠誠:イングループの立場を支持・擁護することで、自分のアイデンティティを肯定したいという欲求が強まります。
アウトグループへの排他:自分の立場に反する言葉を使う相手(アウトグループ)を信用しにくくなります。