また、もう1つの実験では、同じ出来事をリベラル寄り、保守寄り、中立的な言葉で表現した場合に、参加者自身がどのように出来事を捉えるか(同意・反対の度合い)を調査しました。

その結果、バイアスのある言葉で説明された出来事は、参加者が既に持っている政治的傾向をより強化する(分極化を深める)働きを持つことが示唆されました。

このことは、「自分の立場に一致する」表現(政党が好む表現:『アメリカを偉大に』や『アメリカンファースト』など)を目にすると、たとえ発言内容の質にそれほどかかわらず、評価や態度がプラスなりやすいことを示しています。

研究者たちは、この結果について、「人々が自分のイデオロギー的傾向に沿った形で政治的出来事を語る演説者を非常に信頼できるとみなす、という証拠を発見しました。政治的分極化が進むほど、人々は中立的な報道よりも、むしろ自分のバイアスを肯定してくれる報道に信頼を寄せるかもしれません。」と述べています。

また、本研究の大きな意義は、誤情報が必ずしも必要なくても“偏った言葉選び”が分断を助長し得る、という点にあります。

研究者たちは、「誤情報の悪影響ばかりが注目されがちですが、今回の結果は、真実であっても党派的な表現を用いれば、相手への不信感を煽り、意見対立をさらに先鋭化させる可能性があることを示しています。」と述べています。

相手からの信頼を楽して得ようとするときにはしばしば「嘘」が用いられますが、嘘が露見するリスクと常に向き合わなければなりません。

しかし政治的偏見を利用する場合は嘘に頭を使わず本当のことを言うだけで、相手の信頼を勝ち得ることができるのです。

ただ研究者たちは「相手の政治的偏見に合った言葉選び」が、自分と同じ立場の人々からの信頼や好感を高める大きな効果がある一方で、反対の立場を持つ人々からの支持や信用を著しく損なうリスクもあることを示しています。