つまり、あるグループからの支持を得るために使われた言語表現が、同時に別のグループからの反感や不信を生み、意見の対立をより強めるという悪循環が生じやすいのです。
今回紹介する研究では、こうした「党派的言語」がどのように話し手への信頼や reputational benefit(評判的恩恵)につながり、また同時に相手を遠ざける要因にもなっているのかを、実験的に検証しています。
このように、政治的二極化が進む社会状況下では、党派的言語が生むインパクトは単なる“言葉選び”の問題にとどまりません。
どのような言語フレームを選ぶかによって、私たちが出来事そのものをどう捉え、誰を信じ、どんな立場をとるかが変わりうることが、より明確に示されつつあります。
また、こうした「偏見に寄り添う発言」の問題は政治領域に限ったものではありません。
職場やコミュニティ、あるいはSNS上の議論でも、同じグループに属する人々のバイアスを肯定するような表現を使えば、瞬時に“味方認定”されやすくなり、逆に相手の偏見から外れる表現をすれば“敵認定”されやすくなることが想定されます。
そこで今回、ブラウン大学の研究者たちは、偏見の中でも最も根深い「政治的偏見」が相手の好感度や信頼にどれほど甚大な影響を与えるかを調べることにしました。
調査にあたっては、同じ政治的出来事をリベラル寄り、保守寄り、中立的な3種類の言葉で表現し、参加者に話し手の信頼度や道徳性などを評価させました。
その結果、自分の政治的立場に合う表現(集団内言語)を使う話し手はより高く評価され、反対の立場(集団外言語)の場合は信頼度や道徳性が低いと見なされました。
この戦略を使うと、高い評価や信頼を得られるだけでなく、道徳的にも優れた人間とみなされるわけです。
一方、中立的な言葉を使う場合は、どちらの立場からも一応の理解を得られるものの、バイアスの強い参加者にとっては「頼りない」と映ることもありました。