さらに、言葉の使い方ひとつで現実の出来事そのものへの認識や評価が左右され、場合によっては分断が一段と拡大する可能性があることが明らかになりました。
研究チームは、こうした「イングループからの賞賛や信頼を手にする方法」としての党派的言語が、長期的には分断を深めるリスクを孕んでいることにも触れています。
相手の偏見を信頼に変換する「心理メカニズム」

政治的な偏見や党派的な言葉選びが信頼度や評判を左右する背景には、いくつかの心理学的メカニズムが働いていると考えられます。
以下では、今回の研究に関連する主な要因を整理してみましょう。
1:類似性による魅力(Similarity-Attraction)
自分と似た意見を持つ人を「仲間」だと感じ、より好意的に評価しやすいという現象は古くから報告されています。
政治的バイアスに寄り添った表現は、その集団に属する人々の世界観を肯定するため、「同じ側にいる」という安心感を提供し、結果として短期的には信頼感や高い評価を獲得しやすくなります。
人間は共感や親近感が高まると自分と同じ意見を持つ人を「仲間」だと感じ、自然と心を開きやすくなるからです。
また肯定感が得られると、共通の偏見や先入観を共有すると、「自分は正しい」と感じられるため、話し手に対してポジティブな感情を抱きやすくなります。
2:認知的一貫性の追求(Cognitive Consistency)
私たちは、持っている信念や価値観と矛盾しない情報を選択的に取り入れようとする傾向があります。
例えば、すでに「自分の支持する政党が正しい」という前提を抱えていると、その姿勢を裏付けるような言葉を聞いたときに安心し、説得力を感じやすくなります。
結果的に、話し手はより「信頼できる存在」とみなされます。