戦力だけの比較でいけば、ワールドシリーズは4勝3敗で拮抗したであろうが、ドジャースは4勝1敗とヤンキースの良さを発揮させずに勝ち切った。それは、ドジャースのトップ選手がチームプレーに徹し、全員が100%の力を発揮したことが要因であろう。

ビジネスでも必要性が増している協働力

この論文は、ビジネスにおいてマネジメントを考える際にも多くの示唆を与えてくれる。

ビジネスにおいて、チームのあるべき姿は時代と共に変化をしてきた。かつては似たようなスキルを持った人が集まり、繰り返し同様の成果を挙げることが目標とされていたが、タコツボ現象や官僚主義に陥るケースも多く、より柔軟で機能横断的な協働が推進されるようになってきた。

また、イノベーションが求められる環境では、多様なメンバーが融和し、未知の世界を探索し、新たな価値を生み出す上でプロジェクト型の組織形態が増えている。

弁護士事務所のように高度な専門性を持つプロが「個々の仕事で完結する」ビジネスでは、優れた個を育てることが業績へのインパクトを与える重要な活動になる。しかし、プロジェクト型の組織では「人と人との相互作用」の度合いが高く、バスケやサッカーと同じように「協働力」が重要になってくる。単にトップ社員を集めるだけで成功できる確率は低いということだ。

大谷翔平から協働力を学ぶ

では、どうすればトップ社員同士での協働力を高め、最強のチームを作ることができるであろうか? スポーツでもビジネスでも「自分の成功」と「チームの成功」は完全に一致するものではない。これから自分でキャリア形成をする時代になっていくと、「自分の成功」を優先する人の比率が高まるかもしれない。

大谷翔平について語れる専門家は日本全国に増え続けていると推察するが、組織コンサルタントとして「大谷翔平の協働力」について解説しておく(野球でも協働力は必要だし、トップ選手が果たすべき役割を考える上でとても参考になる)。

(1)チームの勝利のために自分の役割に集中すること