今回の分析は、テレビ討論会などの形式張った場面ではなく、大規模な選挙集会に焦点を当てた点が特に興味深いといえます。

集会では、拍手や歓声、時には抗議の声が飛び交い、まるでコンサートのように演説と聴衆が絶えず相互作用を繰り返します。

そのため、瞬間瞬間の空気に合わせて指差しジェスチャーを微調整する余地が生まれ、ライブならではのパフォーマンス要素が強調されるのです。

さらに、聴衆側からのコール&レスポンスを受けて、トランプ氏が指差しの方向を変化させたり、時間的・数的な話題でホッピングを使ったりする場面では、一体感や熱狂が加速します。

こうした「非言語シグナル」と「言語シグナル」の二重効果が、トランプ氏の演説における魅力や独特の存在感を支えていると考えられるでしょう。

悪用禁止のトランプ流心理操作のジェスチャー術

【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表
【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表 / 有効な方法ほど悪用されると被害が甚大になります/Credit:Christopher Hart . Social Semiotics (2024)

ここでは、これまでの話をまとめ、トランプ氏のジェスチャー術を応用するための方法を紹介します。

政治家としてのドナルド・トランプ氏が、敵と味方を明確に分けつつ、熱狂的な支持を獲得してきた背景には、いくつもの戦略があります。

そのうち非言語コミュニケーション、とりわけ「指差し」を軸としたジェスチャー術は、聴衆の感情や認知を強く刺激し、場合によっては“心理操作”とも言えるほどの効果をもたらすものです。

ここでは、そのテクニックを「悪用禁止」を前提に“虎の巻”形式で整理します。

あくまで、この知識は自らの表現力を高めたり、説得スキルを分析したりするための参考としてご活用ください。

①「敵」と「味方」を作り、指先で視覚化する

外向きの指差しで「敵」を示す

相手の名を呼びながら、人差し指を鋭く突き出すように外向きに指差すと、聴衆は瞬時に「敵」を認識します。