加えて、イソップ物語の「酸っぱい葡萄」もこれに当たります。

この物語の中で、お腹を空かせたキツネは、木の高いところに「美味しそうな葡萄」を見つけます。

しかし、何度跳び上がっても届くことはなく、入手できません。

この矛盾を解消するため、キツネは狙っていた葡萄に対して、「酸っぱくて美味しくないに決まっている」と認知を変えるのです。

いくつかの例をあげましたが、こうした正当化の傾向は、多くの人に見られるものです。

主観的には、自分の中の矛盾を解決することでストレスを減らして暮らしていくための心の機能と言えますが、客観的には「誤った判断・主張」である場合が少なくありません。

当然ながら、これらの正当化は、健康リスクを無視したり、人間関係を悪化させたりするものにもなり得ます。

では、自分の中で生じる正当化の傾向を抑えるには、どうすればよいでしょうか。

正当化を避けるには?

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決定の前と後でよく考えるなら正当化できるだけ避けることができる / Credit:Canva

正当化する傾向を少しでも抑えるためにできることはたくさんあります。

まずは、ここで学んだ「認知的不協和」について理解することが大切です。

自分に信念と行動に矛盾が生じた時に、それを解消しようとする衝動が生まれることを知っておくべきなのです。

また大前提として、「最初から正しい選択をする」意識を持つことができます。

正当化は認知の矛盾から生じるので、そもそも矛盾が生じるような状況は避けた方が良いのです。

また考え方で気持ちが楽になることもありますが、無理に今の状態を正当化することが、常に正しいこととは限りません。

「無理に今の状況を正当化していないだろうか」と、選択や行動を冷静に振り返り、間違いを認めることも大切なことです。

「なぜこの決定をしたのか」「本当に合理的な選択だったのか」「自分にとって都合のいい解釈をしていないか」「自分は間違っていたかもしれない」「考えを改めても良い」と自問するなら、認知的不協和を正しい方向に解消できるはずです。