喫煙者が「タバコを我慢する方が体に悪い」と言っているのを聞いたことがあるかもしれません。

それを聞いた瞬間、心の中で「そんなわけないだろ!」と突っ込んだことのある人は多いかもしれません。

しかしタバコに限らず私たち人間には、自分の矛盾した考えや行動を正当化する傾向があります。

なぜ人は、強引な正当化をするのでしょうか。

実は、こうした矛盾は心理学で「認知的不協和」と呼ばれており、人がおかしな理屈を正当化する理由を説明することができます。

目次

  • 認知的不協和とは
  • フェスティンガーの実験
  • 人々はどのように自分を正当化するのか
  • 正当化を避けるには?

認知的不協和とは

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喫煙者が抱える矛盾 / Credit:Canva

私たち人間は、考えや理解、行動に矛盾を抱えることがあります。

例えば、前述した喫煙者は、「私はタバコを吸う」という認知と、「タバコを吸うと肺がんになりやすい」という認知を持っています。

「肺がんになりやすいのにタバコを吸う」という矛盾を抱えているのです。

「収入が少なく節約しなければいけない」のに、「ガチャ課金してしまう」という矛盾を抱える場合もあるかもしれません。

あるいは、「正直さが大切だ」と言いながら、「気まずい会話を避けるためにちょっとした嘘をつく」なんてことも見られます。

こうした心の矛盾状態には、「認知的不協和」という社会心理学的な名称があります。

認知的不協和とは、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガー氏によって提唱された言葉であり、「人が自身の認知とは別の矛盾する認知を抱えた状態、またその時に覚える不快感」を意味します。

そしてフェスティンガー氏によると、人は認知的不協和を解消するために、矛盾する認知を歪め、自信の態度や行動を変更する傾向があると述べています。

これはどういうことでしょうか。

フェスティンガー氏の実験から考えてみましょう。

フェスティンガーの実験