A氏の女性社員に対する言動を全体的に把握することに加えて、そのようなA氏の言動の背景に、フジテレビの「上納文化」と言われるような企業体質があるのかどうかも調査対象になり、それは、フジテレビにとっての「問題の本質」に調査が及ぶことになりかねない。
フジテレビ側としては、そのような事態になるより、当初記事に基づいて「A氏が会食を設定し、ドタキャンした」との事実が調査の対象になっていた方が、当日のA氏の言動などに問題を絞ることができ、好都合だったはずだ。そこで、文春報道の変更に気づきながら、敢えて、世の中や会見での質問者の誤解を放置した可能性もある。文春記事について、橋下徹氏が明示的な訂正・謝罪を要求したことは、フジテレビ側にとっては「ありがた迷惑」な話だったのかもしれない。
もし、そのような理由で、文春記事の変更を放置したのだとすると、フジテレビ側の今回の問題への対応姿勢そのものに疑問が生じることになるが、嘉納氏が社員説明会で述べたように、17日会見の前にフジテレビ側が竹内弁護士と面談したことを前提にすると、その面談の中で、文春報道の変更への対応についても話し合われた可能性もあることになる。
竹内弁護士が、「第三者委員会の言葉は取締役会決定までは出さない」との条件の下で調査の委託を受けた際、どのような調査事項が想定されていたのか。文春報道の変更を認識していたのかどうか、第三者委員会側にも説明責任が生じる。
この点は、フジテレビの問題の今後の展開にとって重大な問題になりかねない。
17日会見の前の時点では、フジテレビの危機対応として、第三者委員会の設置、ましてや「日弁連ガイドライン準拠」というのは、現実的な可能性として想定されておらず、だからこそ、第三者委員会の「だ」の字も出してはいけない、という話だったのではないか。
それが、17日会見の大失敗によって、フジテレビは猛烈な社会的批判とスポンサー離れの事態に直面し、急遽第三者委員会を設置することが不可避となった。第三者委員会委員長として、他に選択肢がなく、竹内弁護士が受託せざるを得なかったのではなかろうか。23日の社員説明会で、嘉納会長が、第三者委員会の設置前の委員長との接触状況を暴露し、その発言内容がネットで公開されることなど、全く想定外だったはずだ。
設置時に委員全員が会見に臨んだジャニーズ「第三者委員会」との比較