フジテレビの今回の問題は、日本の報道では「中居氏と女性社員とのトラブル」とされているが、海外メディア等の報道では、このトラブルについて「性加害問題」とされており、ジャニーズ事務所の問題と同種事例ととらえることも可能な案件だ。

しかし、フジテレビの第三者委員会に関しては、設置時に記者会見を行うことは全く考えていなかったようだ。1月23日の第三者委員会設置のリリースの最後に第三者委員会委員長に就任した竹内弁護士のメッセージが掲載されていることからも明らかだ。それは、既に述べたような第三者委員会の設置の経緯に関係しているのかもしれない。

企業不祥事としての「特異性」と第三者委員会調査の困難性

本件は、フジテレビ経営陣が、文春報道によってにわかに高まった社会的批判への危機対応に失敗したことで、会長、社長が引責辞任し、その後に、その文春報道が訂正されたこともあって、その「不祥事の具体的な内容」自体が茫漠とした中で第三者委員会が設置されたという事案であり、しかも、その大きな問題がある危機対応の経過に第三者委員会側が関与した疑いがあるという面においても、極めて特異な企業不祥事である。

それだけに、第三者委員会側としては、調査報告書の内容でそのような疑念を解消すべく、「日枝支配によって歪められたガバナンス」などについても積極的に調査に取り組むことになるだろう。しかし、本件は、そもそも企業不祥事として特異であり、第三者委員会調査も決して容易ではない。

一般的に、第三者委員会の調査の手法は、(ア)社員(退職者)などの関係者のヒアリング、(イ)社内資料の分析、(ウ)フォレンジック調査、(エ)社員などへのアンケート調査、(オ)情報提供窓口での情報提供の募集等である。

(ア)のヒアリングによって直接の供述で事実を具体的に把握するのが基本であるが、本件の場合、中心となる調査事項1)の「本事案へのフジテレビ社員の関わり」も、文春の記事訂正により、《女性社員の「A氏がセッティングしている会の”延長”との認識」を生じさせた事実》、という漠然としたものになっており、それを裏付ける関係者を特定することも容易ではない。そのため調査事項の2)の「本事案と類似する事案の有無」についても、関係者を特定するのは容易ではない。