記者会見でも、質問者の多くは当初記事を前提として港氏らに「A氏の関与」の有無を問い質していた。それは、17日会見だけではなく、10時間超に及んだ27日会見の時点でも同様だった。
その会見後に、「A氏の関与」について記事の訂正・謝罪が行われ、それまでの世の中の誤解や会見での質問者の誤解は、週刊文春側の訂正・謝罪が遅れたことによるものだとして、文春側が批判されている。
しかし、17日会見の時点でも、既に続報で報道内容の変更は行われていたのであり、フジテレビ側も当然認識していたはずである。それについて、文春側に訂正を求めることもできたはずだ。少なくとも、文春の当初報道を前提に「上納文化」などの批判が拡がっていることについて、フジテレビのHPで文春の記事の内容が変更されていることを指摘すること、記者会見で誤解に基づく質問を受けた際に、文春報道の内容が既に修正されてることを指摘することもできたはずだ。
ところが、27日会見でも、「当該日についてのA氏の直接的関与」を前提とする質問が行われたのに対して、港氏らは、文春の記事が変更されていることに言及することなく、「当該日の関与はない」と繰り返した。
フジテレビは、「文春記事の変更」をなぜ指摘しなかったのかなぜ、フジテレビ側は、文春の当初記事の内容が変更されたことを指摘し、世の中や質問者の認識を改めようとしなかったのか。
一つには、フジテレビという企業の危機管理能力の欠如が原因だとする見方がある。同社は、経営陣・上層部が制作局出身者で占められ、報道部門が軽視されてきたため、事実を突き詰め、誤っていれば正すという能力が欠如していたという見方である。それは、結局のところ、長年にわたって日枝久氏が絶対権力者として君臨してきた同社のガバナンスの構造的な歪みによる弊害とみることになる【YouTube《郷原信郎の日本の権力を斬る!》での週刊朝日元編集長山口一臣氏の見解】。