中居氏と社員との問題でフジテレビが社会から批判された原因は文春報道だった。それだけに、同社にとって、危機対応として最も重要だったのは、その文春報道の中身を正確に見極めることだった。

昨年12月26日に発売号の記事(以下、「当初記事」)を前提にすれば、A氏の関与というのは「中居氏と女性社員の会食を設定し、ドタキャンして二人きりにしたこと」によって、意図的に、中居氏と女性社員の二人きりの場を作ったというものだったが、1月8日発売号の記事(以下、「修正記事」)では、「X子さんは中居に誘われた」と、当日のA氏の関与の形態が変更されていた。

批判を受けている当事者であるフジテレビ側が、この記事内容の変更に気づいていなかったはずはない。ここでの危機対応においては、最新の文春報道の内容(修正記事)を前提に、記者会見での説明を行う必要があった。

ところが、17日会見では、港氏らは文春記事の内容の変更に全く言及せず、

「当該社員の聞き取りのほか、通信履歴などを含めて調査、確認を行った結果を受け、弊社HPにおいて見解をお伝えしました。中居氏が出した声明文においても、当事者以外のもの、すなわち、中居氏と女性以外の第三者が関与した事実を否定しています。ただ、この点につきましても、調査委員会の調査に委ねたい」

と述べるだけだった。

12月27日にフジテレビが出した「当該社員は会の設定を含め一切関与していない」と同趣旨のことを繰り返し、文春報道が当初記事のとおり「A氏が、会食を設定し、ドタキャンした」という事実であることを前提に、「A氏の関与」を否定していたのである。

文春の当初記事は、A氏が中居氏と女性社員との二人きりの場を意図的に作ったことを強く印象づけるもので、それにより、フジテレビの「上納文化」が問題にされるなどして、フジテレビの「女性の人権」軽視の姿勢が厳しく批判されることにつながった。