現在、最も勢いのあるリーグの1つであるメジャーリーグサッカー(MLS)の審判員はストライキで好待遇を勝ち取り、新労働協約では、最低でも約15万ドル(約2,327万円)の固定給と1試合あたり1,500ドル(約23万円)の追加報酬があり、ベテランクラスの主審に対しては、6か月分の退職金も支給されるという。

イタリアのセリエAやフランスのリーグアン、ドイツのブンデスリーガも、円換算で1,200万~1,400万円の固定給と試合ごとに50万~60万円の報酬が発生し、退職金制度も充実している。現実的に審判員だけで食っていけるに足りる報酬だ(それでも別に仕事を持っている副業審判員はいるのだが)。例外を挙げると、セミプロ審判員を採用しているポルトガルリーグでも平均年収は約430万円だ。

また、“金満リーグ”として世界を席巻しているサウジ・プロフェッショナルリーグは、プレミアリーグのトップ審判員マイケル・オリバー氏に、たった1試合で3,000ポンド(約57万7,000円)の報酬とビジネスクラスの航空券を提供。これはプレミアリーグの倍以上にあたる金額で、その後、他の英国人審判も続くようになったことでクラブやサポーターから批判され、この試みは終わりを告げた。


Jリーグ 写真:Getty Images

審判員の待遇改善は日本サッカーの発展へ

もちろん、報酬さえ上げれば審判員のレベルが劇的に向上するわけではない。しかし、フィジカル的にもメンタル的にもタフさが求められる仕事の対価としてみれば、Jリーグにおける報酬は少な過ぎるといえよう。

昨2024シーズンの天皇杯2回戦で、日本唯一のサッカー専門学校「JAPANサッカーカレッジ」がJ1名古屋グランパスを下し、ジャイアントキリングを成し遂げたことで話題となった。同校では選手のみならず、審判員も育成している。いまや、選手としてプロを目指すのではなく、審判員を志す若者も増えてきている。日本サッカー界にとっては非常にポジティブな流れとなっているが、その夢の先が年収360万円では、「やりがい搾取」といわれても致し方ないだろう。