野々村氏から話を振られる形で審判員の収入について問われた西村氏は「一般企業の管理職くらい」と語ったが、これを受け野々村氏は「1,000万円ちょっと」と付け加えた。ベースとなる基本給に加え、担当試合数が上積みされる給与体系だという。Jリーグトップからの発言だ。その言葉に嘘はないだろう。

担当試合数によるインセンティブは、主審に限れば、今季からJ1で15万円(昨季12万円)、J2で7万円(昨季6万円)、J3で5万円(昨季3万円)だ。受け止め方は人それぞれだろうが、少なくとも筆者は「安過ぎる」と感じた。

審判員には選手同様の運動量は当然のこと、完璧な仕事を求められ、一方のチームに不利益なジャッジをすれば、スタジアムで罵声を浴びるだけではなく、今ではSNSなどで誹謗中傷に晒される時代だ。それらの対価としては、あまりにも見合わないと思えるのだ。

さらに言えば、西村氏は日本を代表するトップ審判員だ。国際主審として、2010年のFIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会では、日本人審判史上最多となる4試合の主審を務めた。同年、FIFAクラブW杯2010決勝(インテル対マゼンベ)の主審も務め、2014年ブラジルW杯の開幕戦(ブラジル代表対クロアチア代表)の主審を務めるなど、世界的に活躍した。そんな西村氏の年収が約1,000万円ちょっとでは、あまりにも夢がなさすぎるとはいえないだろうか。

プレミアリーグ 写真:Getty Images

世界の審判員の給与事情を比較すると…

2025シーズンのJリーグの登録審判員は主審56人、副審97人だが、そのほとんどは主たる職業を別に持ち、副業として審判員を務めている。プロフェッショナルレフェリー以外の審判員全てがこれに当たるといっていいだろう。例えJ1の主審だとしても、年間30試合を担当したとして、審判員としての年収は約360万円程度だ。