もちろん野々村氏もこの現状を良しとしているわけではないのだが、その原資に苦しんでいるのが現状だ。2024年度は約11億7,000円の赤字予算を組み、決算では約5億7,000円の黒字見通しとなったが、2025年度は再び15億1,000億円の赤字予算を組んだ。
Jリーグは公益社団法人であるため黒字予算を組みにくいという特殊な事情があり、結果的には近年は黒字が続いているのだが、経常総費用約343億3,800万円のうち、メディア露出のためのPR費用などで18億4,000億円、クラブへの配分金を5億4,000万円増やす一方で、これまでは審判員育成のための予算は据え置かれ続けてきた。今季になってやっと審判員育成に多くの予算を付け、本腰を入れ始めたようだ。それでも全ての審判員が本業として審判を務め、生活できる報酬を得るまでには至らないだろう。
海外ではどうか。イングランドのプレミアリーグの審判員は、その経験や能力に応じ、14万7,258ポンド(約2,811万円)、10万5,257ポンド(約2,009万円)、7万3,191ポンド(約1,397万円)と4つのランクの変動制の固定給があり、1試合1,116ポンド(約21万円)、VAR審判員でも837ポンド(約16万円)の追加報酬を得られ、加えて、判定の質や重要な試合でどれだけ正確に裁けたかによるボーナスも加算される。
スペインのラ・リーガの主審は、固定給14万8,621ユーロ(約2,389万円)に、1試合5,029ユーロ(約80万円)、VAR審判員は2,514ユーロ(約40万円)の追加報酬が加算され、また、ラ・リーガの審判員は広告の入ったシャツを着用するため、年間2万6,229ユーロ(約421万円)の追加報酬も支払われるという。
報酬面だけで言えば、Jリーグの主審はプレミアリーグやラ・リーガのVAR審判員にも及ばないのだ。