また、現代経済では大規模工場の設備投資よりはるかに波及効果の大きい消費の活性化でも、多くの女性が正規雇用の給与水準を確保したほうが経済全体の成長性が高まります。と考えれば、23区内での子育てもそれほど絶望的な高望みではないのです。
女性の正規雇用の少なさは文化的要因ゆえか「女性の正規雇用が増えないのは必ずしも企業が男性を優遇し、女性をふるい落としていることだけが原因ではない。正規雇用の女性でも、家事も完璧にやろうとして忙しすぎて燃え尽きてしまうことも多い」というご意見もあります。
「これは家庭が清潔できちんとしていることや、家族揃って妻であり母である女性のつくった家庭料理を食べることを重視する日本文化特有の価値観が重圧になっているので、企業の人事・雇用政策でどうこうできる問題ではない」と続くわけです。
たしかに家庭を持った日本女性は正規雇用で働いているときでさえ、非常に多くの時間を家事に割いていることは、次のデータにもはっきり表われています。
上段を見ると、結婚してお子さんもある正規雇用の日本女性は週168時間のうち85時間を仕事・家事・家族の世話に使っていて、自分自身の食事・睡眠・入浴・身だしなみのためには半分弱しか使えないというデータが出ています。
そして、下段を見るとフルタイム就業の日本女性に近い時間を家事に使っている正規雇用の女性が多いのは韓国だけで、その他先進国のフルタイム雇用の女性の家事時間はずっと短いこともわかります。
しかし、これはほんとうに「文化的な重圧」の問題なのでしょうか。私にはどうも腑に落ちないところがあります。
バリバリ仕事をこなす女性の配偶者が揃いも揃って「いくら稼いでいようと家事は女がやることだ」という頑迷固陋な男性ばかりとも思えないし、家に帰れば家事は何一つできない足手まといばかりとも思えないのです。
あまり根拠のある推測ではありませんが、次のような理由で正規雇用と家庭を両立させている女性が、仕事も家事も完璧にやろうとするスーパーウーマンを目指してしまうのだろうと私は思っています。